柿ちぎりを終えて
昨日は家族総出で“富有柿のちぎりこみ”をしてきました。
ちぎりこみというのは、柿の木に残っている実を、一つ残らず収穫する作業のこと。柿農家ではごく普通の年中行事なのですが、私のような素人にとってはなかなかに奥が深い仕事です。
我が家は、早生品種を一部生産していますが、大半はこの富有柿。その中で特に状態よく大きくなりそうな一部の柿に限っては、袋をかけ、じっくり時間をかけて熟したタイミング(12月10日以降~15日頃)に収穫します。なので、昨日の収穫作業で、山場は過ぎました。
例年、富有柿の柿ちぎりは11月中旬から始めて11月25日ごろまでには終えるものなのですが、今年は猛暑の影響で柿の色がつくのが遅れ、当地の柿農家さんは軒並み12月に入っても柿ちぎりを続けなければいけない有様。

柿の収穫は、実の“色づき加減”を見て、ちぎるか、見送るかを判断します。
これが本当に難しい。ぱっと見では「お、赤いな」と思っても、角度を変えたり光の具合で見てみると、まだ青さが残っていたりする。逆に、まだ早いと思っていた実が、裏側だけしっかり赤くなっていたりもする。
そして、この作業が不思議なくらい“集中”してしまう。
やり始めると、枝の奥、さらに奥へと手を伸ばし、まるで宝探しのように夢中になってしまうのです。家族でワイワイ言いながらやるのも楽しいし、気づけば時間を忘れてしまうほど。

ただ、ここに落とし穴があります。
夢中になるあまり、肝心の“選定基準”があやふやになるのです。気持ちが前のめりになった瞬間、まだ色づきが足りない実まで「いけるだろ」と切り落としてしまう。あと数日、いや、下手すると翌日にはいい感じに色づいていたかもしれないのに。
結婚して柿農家(兼業農家)の婿となったことで、この作業と関わるようになりました。これでかれこれ10年目。手伝い始めた頃に比べれば、もちろん慣れてはきました。
色を見る目も育ってきたし、手つきも少しは農家らしくなった……つもりです。でも、いまだに選定ミスはなくなりません。
義父からは、収穫を始めた初日にこう言われました。
「迷ったら見送れ」
たった六文字。
でも、実践しようとすると驚くほど難しい言葉です。
なぜなら、“欲”があるからです。「あれも収穫したい、これもいい感じ、ちょっと微妙なものもあるけれど、明日は仕事で手伝えないから今日採っておきたいみたいに…こうして、多少条件を満たしていなくても、自分都合で押し切ってしまうことがあり、切ってから、家族が切ったのと色を比べて後悔する、というのが毎年のパターンです。
さらに厄介なのは、日が傾いてきた夕方の時間帯。
オレンジ色の光が当たると、実際より赤く見えてしまう。これが曲者で、焦っていると判断を誤りやすい。義父いわく、夕方の誤収穫は誰でも経験するそうで、「落ち着けよ、おてんとうさまに騙されるなよ。」と笑われました。

でも、そういう時に限って、私は大事なことを忘れているんです。
「どうせちぎりこみで収穫するんだから、焦らなくていい」
そう、焦って今収穫しなくても、ちぎりこみの日は必ず来るんです。
熟すべき実はその時までにちゃんと色づき、逆にそのタイミングでも青いものは、その後どれだけ時間をかけても赤くなりません。切り落とす必要もないし、追いかける必要もない。
ここまで書くと、読みながらうすうす感じている方もいると思います。
──相場と同じだな、と。
相場も似ています。
迷ったエントリーは、だいたい損失になります。
焦って入ったトレードも、だいたい裏目を引きます。
相場は逃げません。
迷ったら見送っても、あなたの人生から“チャンス”が消えるわけではない。
私たちはつい、
「今、動かないと取り逃すかも」
「もう少し待てばよかったのに」
そんな感情に振り回されがちです。
でも、FXを長くやっていると気づきます。
待てる人が勝つ。
待てるからこそ、自分の形にだけ手を伸ばせる。
チャートの方から「機が熟したよ」と静かに近づいてくる。
そこまで耐えて、待って、ようやく一つのエントリーが成り立つのです。
柿の木の前で枝の奥を覗き込みながら私は毎年同じことを学びます。
欲で基準を曖昧にしないこと。
光に騙されないこと。
焦って収穫しないこと。
そして──
迷ったら見送ること。
この六文字こそが、メンタル勝負のFXでは最も大切な“土台”なのだと、しみじみ思うのです。
焦って収穫した柿は甘くありません。
焦って入ったエントリーも、同じ道をたどります。
待って、育てて、熟した瞬間にだけ手を伸ばす。
それは農家の知恵であり、トレードで生き残るための知恵でもあります。
あなたのチャンスは逃げません。
焦らず、己の基準を守り、待つ。
その積み重ねが、いつか静かに実りを迎えるはずです。
相場と柿の木、まったく異なるものですが、相場は人間の感情で動きますし、柿の木にも季節を感じる感情(センサー)のようなものはあると考えると、どちらも、自然界がつくったものという意味で、フラクタルの妙を感じてしまいます。不思議ですね。
今日もお互い、迷ったら見送りましょう。
そして、熟した瞬間だけそっと手を伸ばせる自分(あなた)でいられますように。
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